小説
優先座席へ腰掛ける儂の横には女子高生がいた。 紺のセーラー服を着崩さずにきっちりと着込んでいるところに好感をもてる。 あまり不躾にみるわけにもいかず、バスの外に目をやる。 ペットタウンの合間に大型小売店が足ち並び、少し先にいったところにはショ…
「ばいばい」といつものように君は去っていった。 まるで近くのコンビニによるかのような気楽さで扉は閉まる。 二度とその扉は君の手で開かれることがないことを知っている。 喜びも悲しもすべて分かち合ったと思えるほど好きだったことを忘れる事はできない…
子供時代ピザはほとんど食べられなかった。 普通の子供の例に漏れる事無く、ハンバーガーなんかと同じく、味の濃い、舌をガツンと喜ばせてくれる存在に、どうしようもなく心惹かれていた。 けれど、ジャンクフードを好ましく思っていなかった母親は息子に買…
お兄ちゃんが休日にリビングのソファーでくつろいでいる。 大きな犬が丸まったような姿に思わず頬がゆるむ。 けれど、スマホの内容が女子との連絡と見えて、目が自然と細まってしまう。 これくらいの距離なら、書かれている内容にも目が届き、許しがたいやり…
「お兄ちゃん、お兄ちゃん」 「なんや、妹よ」 リビングのソファに寝転がってスマホでラインをしていると、キッチンから俺の背中越しで、テレビを見ていた妹から、眠そうなとろんとした声で話しかけられた。 「私、彼氏と別れたんやけど」 「はいっ!?」 予…
朝のラッシュアワーの電車に揺られながら、漫然とした眠気にうとうとして、人混みの中でいつもの息苦しさを覚える。 意識をスマホに向けて、ただ今日も社畜へと続く駅まで、じっと耐える。 慣れた平日の一コマで、それが日々の始まりだ。 もう自分が疲れてい…
「う~、暇だ~、暇だよ~!」 「四里子(よりこ)足ばたばたしすぎ、スカートがめくれてる、はしたない」 視界の隅で花柄のギャザースカートが揺れて、僕は読書に集中出来ずにいた。 「樹(いつき)! ちょっとまさか中、見た訳じゃないよね!?」 「ね!?…
バスから勢いよく飛び出していく女の子をみて、その元気のよさに震えた。 どこか必死で、なにかに食らいついていこうとする姿勢が眩しい。 自分のことを考えるとじわりとお腹が痛む。 あんな風に行動できたら、きっと違うんだろうなとは思う。 けど、そんな…
バスを乗り間違えた。 急いでいたせいで、よく確認をしないまま、違う行き場のバスに乗ってしまっていた。 しかも間が悪い事に、乗車した事に安心して、まだ工事途中だった顔を整える為にメイクに必死だった為、気づくのに遅れた。 やばい、マジ、やばい。 …
ういろうといえばどこでしょう。 やはり名古屋の銘菓として有名でございましょう。 それとも本家本元がございます神奈川県小田原でしょうか。 いやいや、ういろうの老舗といえば山口は外せないでしょうか。 どちらのういろうも食させていただいた身としては…
時間を有効に使いなさい。 まさにその通りだなと思う。 一分一秒を大事にしなさいと人はいう。 仰るとおりですと思う。 社会人になって年をとっていけばいくほど仕事量が増えていく。 できる限り自分に与えられている時間を効率化させて、無駄を省いていく必…
パンケーキが有名になり定着した。 2008年から海外の名店が日本に進出して、パンケーキブームが起こり、人気が定着した感じがある。元々、子どもの頃から人一倍パンケーキが好きだった私は、色々なパンケーキの専門店ができて、この十年近くを楽しむ事が…
昼食にやきそばを食べる事が多い。 特に土曜の午後に食べたりする。 子どもの頃は土曜日に午前中までの授業を終えて、帰宅したら用意されていた料理だった。 それが働きだして一人暮らしを迎えた今になっても変わらない。 別に昔ながらの習慣にひきつられて…
社会人になってコーヒーを飲む事が増えた。 学生時代はカフェに行く事があれば、まわりがコーヒーを頼むので、雰囲気にのせられて注文していたので、決して味わってはいなかった。苦くて喉の通りも悪い飲み物だという印象で、わざわざミルクや砂糖をたして飲…
ドーナツがたまに食べたくなる。 真ん中に穴が開いているあのフォルムが好きだ。 なんだか少しかわいくみえる。 学生時代はよくチェーン店に行って、放課後の時間を過ごしていた。 定番メニューがずらりと並び、新商品をたまに見繕いながら、半額セールなん…
ダイエットをしているとリンゴをたくさん食べる事になる。 間食の代わりにリンゴを食べて、お腹を満たす。 カロリーも低くて腹持ちも悪くはなく、仕事で疲れた頭にも糖分が巡るのか少しすっきりもする。 ストレスで荒れた肌にもいいらしく、ポリフェノール効…
ボールに水を注ぎ、購入したばかりの赤卵を入れていく。 重く沈んだ新鮮な赤卵をボールから取り出して、暑い殻を割り、つるりとした生卵が出てくる。 卵黄をスプーンですくいとって、別の入れ物に移し変える。 残った卵白はハンドミキサーでかき回し、ぷつぷ…
僕はハンバーガーが好きだ。 焼肉よりステーキよりハンバーグよりハンバーガーが好きだ。 何が好きだって、あの積み重なった味の重層感がたまらなく僕の舌に喜びをもたらす。 バンズの柔らかさに歯を沈め、その後に来るレタスのシャキシャキ感が気持ちよく、…
里帰りの事を考えていた。 今年の年末年始に実家に帰省するのだが、どうだろう? 先延ばしに出来ないだろうか。 親がうるさいのでそれは許されないよなーと思う。 多分、戻らないと生活費振り込まれなくなりそうなのが、怖いので、無理だ。 夏休みの時はなん…
35歳になった。 子どもを二人授かって、長男は小学校高学年となり、体も大きくなって、もう体力的にはかなわない。長女はまだ小学校低学年だが、親のアタシがいうのもなんだが、利発な子でこちらのほうがバカみたいに思えるときがある。 一番手のかかる時…
小学校の同窓会が開かれる事になった。 運よく、もしくは運悪く里帰りしている時に、偶然にも二十年ぶりくらいに再会した同級生に捕まって、人付き合いを出来る限り避ける傾向がある私を矯正する為に、妻が連絡先交換を半ば強引にすすめ、今回、参加する事に…
俺様はバスが嫌いだ。 狭いしきゅうくつだし、その上揺れるし、頻繁に停まって扉を開け、風も冷たい。 いい事がないのである。 若い女がまどろんでいるが、ぜひその柔らかな膝の上を堪能したい。 うーん、気持ちいいんだろうな。 だけど、今、そんな事はでき…
うとうとする。 電車が揺れるたびにあくびがでる。 多分、寝ると起きれない。 隣の席の男の子も疲れた表情をしていて、世の中、うちと同じ様に元気がない。 バイトの連勤が続いていて、さっき深夜、朝、夕方までの勤務をおえたばかりなので、仕方ないんだけ…
バスが坂を下っていくにつれ、横揺れも大きくなっていく。 それはまるでおれっちの心を現しているみたいだった。 おれっちは大事なものを失くしてしまった。 物心つく前から使っていたもので、未だに愛用していたものだった。 おれっちになんの断りもなく、…
バスの中に、小さな女の子が腰掛けている。 反応がいちいちかわいくて、マフラーの中で口角が自然とゆるむ。 一緒にいるお母さんは女の子がなにかいうたびに、過敏に反応している様にみえる。 少しやつれてもいるようで、小さな子どもを持つ親がこの季節、倒…
あたたかいのはすき。 さむいのはきらい。 だから、バスはすき。 おかあさんのヨコにすわってる。 おはなししようとおもったら、おこられた。 やなかんじ。 まえでそとをみたい。 けど、おばあちゃんがじゃまでみえない。 まどをさわるとジーンとしてつめた…
先程、乗合バスに乗車した若い男子はあたくしの前に寄りかかるように座りました。 みるからに体調不良の様子で、乗車時にみせた顔色は青白く、停留所までくるのにも一苦労だったのでしょう。 大学生程の年齢と見受けられまして、彼が地方からきた男子だと想…
ぼーっとした頭で視線を彷徨わせると、ちょっと好みな年上のお姉さんがいた。 バスが揺れても、すました顔は変わらず、世の中の全ての出来事については私と関係ありませんといった様な風貌だった。 仕事ができそうだけど、笑うと幼くみえそうな感じがして、…
顔色の悪い太った学生がふーふーいいながら、肩を上下させている。 バスの中で酔ったのだろうか。 それともあまりにも腹の立つ事があって内心を隠せずにいるのだろうか。 ちなみにウチは今どういう顔をしているのだろう。 どっと疲れた顔をしているのか、能…
バスの広告にある文字を追って視線を横にずらしていく。 ブログを更新する身の上で見出しやキャッチーな言葉というのを日々勉強せねばならない。 一巡すると、視界の隅にうつるイケメンの横顔が気になった。 長いまつ毛がふせられ、憂いを含んだように、そっ…